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『Hamilton』観劇レポート [観劇レポ]

ついに!!ついに!!挑戦13回目にして今最もチケットが取れない超話題作『Hamilton』のLotteryが当たったので観に行ってきました。
名前を呼ぶボックスオフィスの係の人がRyoheiが読めなくて最初違う人が呼ばれてるのかと思いましたが気がつけて良かったです、さらに当たった人は何枚チケットが欲しいか言うのですが「One!!」と言った時に周りから物凄い拍手が送られてちょっと嬉しかったです。
当てるのに一ヶ月掛かりましたが名前を呼ばれた時の体中の血が沸き立つ様な興奮で全ては吹っ飛びました、しかもチケットは作品の主人公であるAlexander Hamiltonが描かれている10ドルで最前列のほぼど真ん中という超素晴らしい席!!
さて本題の作品についてですが『Hamilton』はタイトルの通りアメリカ建国の父(The Founding Fathers)の一人であるAlexander Hamiltonの一生を描いたミュージカルです。

Alexander Hamiltonはカリブ海のネイビス島に私生児として生まれましたがアメリカに移り住みKing's College(今のコロンビア大学)に進学し、そこで出会った仲間と義勇軍を作りアメリカ独立戦争に参加し22歳ながらGeorge Washingtonの右腕として活躍し独立を勝ち取った後にばらばらの国だったⅠ3州の憲法や法律を分析してどうやったら連邦国家としてまとまる制度が作れるかを書いた論文集で準憲法の様に見なされている「The Federalist」を主席筆者として執筆し、さらに憲法草案を起草します。
またThomas Jeffersonが嫌っていた商業や金融業が国の未来を作ると財務省や中央銀行や造幣局を設立して農業国家から産業国家へとなる礎を築きあげニューヨークからワシントンD.C.へ首都を移す事をJeffersonと密約するなどアメリカに多大なる影響を及ぼし貢献をした人物でありながら49歳という若さで友人から政敵になってしまったAaron Burr(Jeffersonと大統領選で
決選投票をした時にHamiltonがJeffersonが選出される様に動いた)との決闘で命を落としたという劇的な人生を送った人物です。

キャラクターやシーン毎にギャングスターラップっぽいゴリゴリの韻の硬いラップをして力強さを出したり、一小節の中に畳み掛ける様にリリックを重ねて心から言葉が溢れ出る内からの欲求を表現したり、初めて大学で後に一緒に戦い国を作って行く仲間達に会う時にボイスパーカッションと机を叩くリズムでサイファーが出来てフリースタイルっぽいやり合いをしてフローやリリックの巧みさでHamiltonがリーダーになる器である事を示してお互いを認め合ったり、Jeffersonとのラップバトルでラップ巧者の2人で議論をエキサイティングなものにしたり、Schuyler三姉妹がDestiny's Child風なR&Bを歌ったり、 King GeorgeがThe Beatles風なポップロックを歌ったり(彼が出てくるだけで笑が起きる強烈なキャラクターでした)とラップや楽曲のスタイルでのストーリーテリングが実に巧みでしたし耳に残る曲の多い事多い事、やっぱりLin-Manel Mirandaは天才です。

Andy Blankenbuehlerによる振付のダンスはヒップホップを軸に様々なスタイルを取り入れた新しいシアターダンスの形を作り出していて一つ一つの振りがメリハリが効いていて力強くユニークでストーリーの中にちゃんと生きて雄弁にこちらに語りかけてくる素晴らしい振付で特に群舞になった時の舞台上から溢れ出てくるエネルギーと迫力に圧倒されました。

Thomas Kailによる演出も盆を左回りにしてる時にストーリーを進め右回りにした時に時間を戻して違うキャラクターとの間で考えていた事や起こっていた事を見せる、まるで舞台上をターンテーブルの上のレコードの様にスクラッチする様に使ったり、前述した様にシーン毎に酒場でサイファーでのフリースタイルをしたり議会でラップバトルで議論するなどヒップホップと歴史劇を見事に融合させて観た事のない様な新しいミュージカルを見せてくれました。

ビジュアル面もDavid Korinsによるセットデザインもブロック造りの納屋みたいなセットに細かいピッチフォークや椅子、シャベル、銃、本、ロープなどの小道具や仕掛けが散りばめられていて隙がないですし、Paul Tazewellの衣装もキャラクターの個性や心情の変化を色の変化やデザインのスタイルで表現していて見事でしたし、Howell Binkleyによる照明もスタイリッシュかつ大胆でどのシーンも画になるものばかりでバンッと決まった時は思わず心の中で「かっこいい」と鳥肌が立つキレの良さでした。

キャスティングも歴史上の実在の人物達が登場人物であるにも関わらずアメリカの建国期の移民であるHamiltonの物語を今のアメリカの人々が語るのだからと人種に捉われないキャスティングをしている事が歴史物なんだけど現代の香りがして過去と現在を繋いで今自分達がこのストーリーを語るんだと言う気概と熱意がキャスト全員から感じられ、それに加え脚本・衣装・楽曲・演出など様々な方向でキャラクター造形がしっかりされているので舞台に登場するどの人物も魅力的でキャストのそれぞれのキャラクターへの愛着とそれを感じさせる熱の入ったパフォーマンスを引き出していると思いました。
中でも素晴らしかったのはHamiltonの激動の人生を見事に演じ切った脚本・作詞作曲も手掛けたLin-Manuel Miranda、奥さんのElizaを裏切られながらも許し愛の強さを渾身の演技で表現したPhillipa Soo(ラストシーンでの涙を浮かべながらも彼女の力強く立っている姿は息を飲む素晴らしい演技でした)、狂言回しの役回りを担いながら出会いから決闘で射殺した後までのHamiltonへの感情の変化をパワフルなパフォーマンスと繊細な演技で魅せたAaron Burr役のLeslie Odom Jr.、さらにMarquis de LafayetteとThomas Jeffersonを演じ強烈な個性を魅せたラッパーであり俳優の今作でブロードウェイデビューを飾ったDaveed Diggsです、彼らはトニー賞にもノミネートされて有力候補になると思います。


伝統的なブロードウェイミュージカルの形を曲、振付、演出、キャスティングなど様々面から覆し新たな発明をしているこの舞台は精神性からしてヒップホップで歴史物をここまでエンターテインメント性があって奥深い全く新しいミュージカルにした今作は傑作としか言いようがありません。

あらゆる面で革新的に新たな挑戦をし壁を乗り越えてきた作品なのですでに多くの賞を受賞してますがこれからもトニー賞を始め多くの賞をかっさらうと思うのでチケットは高騰しLotteryも中々当たりませんがニューヨークに来た際には是が非でも観る価値のある作品なので劇場に足を運んでみてください。

紀伊国屋ホール 『悪』 [観劇レポ]

岡本貴也さん作・演出の舞台『悪』を紀伊国屋ホールに観に行って来ました。

物語の中で激しく移り変わり露わになっていく人間の業をぶつけてくる様な脚本が面白かったです。

人間性・非人間性、善悪の軸が凄いスピードで動いて行き登場人物の腹の中にある業の深さが後に産まれてくる純粋過ぎて危ういクローンと共に観客の前に現れるので、その人間の醜さであり人間性の担保とも言える様なグロテスクな部分と対峙する舞台だった様に思います。
また人間性との対比として、人間の業によって産まれたクローンが人間の手を離れ人間とは違う倫理・道徳観を持ち進んでいく姿にはSFを感じながらも昨今の科学的事件とリンクし現実との地続きさを感じざるお得ないのでリアルな怖さ・不気味さがあり観ていて思わず力が入ってしまいました。
人種・宗教に関わらず『人間性』を考えさせられる作品なので日本のみならず色んな国でも衝撃を与えられる作品だと思うので是非観に行って欲しいと思います、オススメです


新国立劇場『三文オペラ』 レポ [観劇レポ]

新国立劇場に『三文オペラ』観に行って来ました。

この『三文オペラ』は現代演劇の最大の変革者の1人と言われるドイツの劇作家であるベルトルト・ブレヒトと作曲家のクルト・ワイルがジョン・ゲイの「乞食オペラ」を基に1928年にベルリンで初演した作品でその時はキャバレーやレビューの芸人を起用したキャスティングで1年以上のロングランを記録した大ヒット、その後ヨーロッパ各地で上演され33年にニューヨークで上演(その時は12ステージで閉幕)55年にはオフ・ブロードウェイで再演されその時にはワイルの奥さんのロッテ・レーニャも出演して2611回のロングランを記録したミュージカル・コメディーの始祖と呼ばれる作品です。

題名に「オペラ」とありますが厳密に言うとこの作品はオペラでもミュージカルでもなく芝居の中に登場人物の感情の高まりとは関係ない場面でも独立した歌が入る日常性を異常化させて、芝居を脱習慣化させるブレヒトが提唱した『異化効果』を取り入れた演劇なので、楽曲を通してのパフォーマンスや俳優が役を離れてその役や物語をメタ的に批判したり言わゆる「第四の壁」を超えて観客を巻き込んだり、身振りや小道具を取り入れた視覚的にも特異な演技をする事によってその場面や登場人物を切り取り拡大し文字通り通常とは異なったものと観客に認識させ驚きや好奇心を作り出し観客が舞台上の出来事に感情を同化しない様にする方法なので独特のリズムがあり、感情移入するというより舞台を観察して考えると言った面白さがありましたし、楽曲の素晴らしさと陰と陽が同居してる世界観・パフォーマンスで舞台に猥雑さや緊張感を醸し出していていました。

遊び心のある台詞回しやメタ語りや観客を巻き込む演出でエンターテイメントにしながらも底辺の人達にスポットを当てて彼らの歪みや姑息さずる賢さを描く事で強烈に感じたのは生き物としての人間のそういった面を全て含めての『生』であり、立川談志の言葉を借りればこの作品も業の肯定であると感じました。
登場人物全員がもつ歪み・醜さを描き出しかつ生きる姿を観せていった後にあのふたつのラストを迎えて『許し』や『正義』にさえ疑いを向け観客の日常に入り込み考えさせる力は初演から90年近く経っても世界中で上演され続ける傑作たる所以だと思いました。

キャストのみなさん素晴らしかったですが、池内さんのメッキースは人たらしなのも納得な全身から出る色気と荒々しさでハマリ役だと思いましたし何と言っても今回はソニンさんのグイグイ持ってくパワーに驚きました(『モーツァルト!』のコンスタンツェも今から観るのが楽しみです)。

『Slava's Snowshow(スラバのスノーショー)』 レポ [観劇レポ]

Theatre1010に『Slava's Snowshow(スラバのスノーショー)』を観に行って来ました、One of the best shows I've ever seenです!!。

照明が落とされた少し薄暗い劇場に一歩足を踏み入れると客席の床には白い雪が敷き詰められ、機関車が走る音や鳥の鳴き声が響きこれからなにが起こるんだろうと言うワクワクと共に童心に帰ることが出来ました。

ストーリーらしいストーリーは無いんですが次々と出て来ては消えていく、いびつだけど美しいどこか物悲しさとおかしさも同居してる不思議な世界と観客と心を結んではいきなりブツっと切ったりまた寄り添って来たり、その微妙なやりとりがクラウン達と観客との間で起こる期待と裏切りの心地よいゲームの様に感じました(劇場全体で嘘を共有して純粋な感情を作る何とも言えない劇場体験でいつまでも続いて欲しくなりました)

劇場全体にふわふわの雲みたいな幕を広げ、吹雪を吹かせ、巨大な風船が舞い踊る非日常の空間に連れてってくれて、またクラウン達の表情や細かく小さな動きの積み重ねで観客の心を巧みに掴んだり離したりする名人芸を堪能出来たので(自分はこの舞台を観てクラウンに憧れてしまいました)、ここ最近観た舞台の中で一番心から楽しめました、何度も観に行きたくなる作品です。


『War Horse』 レポ [観劇レポ]

シアターオーブに『War Horse』を観に行って来ました。

National TheatreのTrailerで初めて舞台の存在を知り、トニー賞で度肝を抜かれ、数年前にツアーのTrailerでComing Soon Japanって書かれてたのを観てからずっと待っていた作品でしたが期待を裏切らない素晴らしい作品でした。

様々なシーンで牧歌的な温かさや戦場の悲惨さを浮き彫りにする豊かな顔を持つ照明、決して説明過多にならず映像や歌・音楽によって観客を物語の中に導き登場人物と共に感じさせる語り口が実にシンプルかつ鮮やかで、洗練された驚きと美しさに溢れる演出で極上の演劇空間にどっぷりと浸る事が出来ました。

何と言っても南アフリカの伝統的な人形を取り入れたパペットを作り創作活動をしているHandspring Puppet Companyが制作したジョーイを始めとする劇中に登場するパペット(彼らはこれらを情緒工学の作品と呼んでいる)の息吹を感じる生き物としての生々しさに圧倒されると共にTheatrical Magicとはこのことか!!と思わせてくれます。
またHandspring Puppet CompanyのBasil JonesとAdrian Kohlerが以前言っていた「人形が舞台上で生きようと渇望する事が物語の原型なのです」と言う様に命のないものに命を吹き込む俳優達の細かな演技(複数の声を同時に出す事でリアルな馬の鳴き声を表現したり、呼吸を合わせて息をして馬の息遣いと共に体を動かしたり)によって徹底的に命をそこに表現しようとしているのでパペットと人間が同時に舞台上で対峙して物語が語られる時に観客は強烈に命を感じざるを得ないし戦争の中で描かれる人間と軍馬達の力強さと気高さ、さらにそれを奪ってしまう戦争の愚かさ恐ろしさに心を激しく揺さぶられます。

間違いなく文句無しの傑作だと思うので時間のある方・興味のある方には観に行く事を強くオススメします。

今度はHandspring Puppet Companyが『War Horse』以前にマリ共和国のソゴロン・マリオネット一座と制作した実物大のキリンのパペットが出て来る作品が観てみたいです。

『イン・ザ・ハイツ』 レポ [観劇レポ]

シアターコクーンで上演中の『イン・ザ・ハイツ』を観て来ました。

ブロードウェイでオリジナルキャストを観てからずっと大好きな作品だったので日本人キャストで上演すると聞いてから観るのを楽しみにしていました。

改めて観て感じたのは国境を超えるストーリーの普遍さと様々なタイプの音楽を取り入れ観ている人の心を掴むユニークな音楽の力強さです、観終わった後にCDが欲しくなった人も多いのでは?

ヒップホップの楽曲に日本語の歌詞をミュージカルとして成立する様に乗せるチャレンジに挑み、やってのけたKREVAさんに拍手と感謝を送りたいです、また同時にヒップホップのリリックとしての心地良さとストーリーテリングを両立させる難しさを感じました、ハマった時の加速度的に高まる高揚感と音楽の魅力・訴えてくるパワーに対しハマり切らなかった時の言葉の届きにくさは諸刃の剣だと感じました。

キャストのダンススキルの高さが凄くて多々ある群舞シーンではラテンのパワーに満ちていてバランスで言うとオリジナルプロダクションよりもダンスによるストーリーテリングに力が入っている様に感じました、なので最初は違和感があったPiragua Guyに若い植原卓也さんを起用したのも「そう言うことか!!」と納得です。

ダンスによるキャラクタライズも巧みで、例えばベニーの動きのブラックさを際立たせる事によって彼だけが物語の中でアフリカンアメリカンだと言う輪郭がハッキリしさらに音楽でも彼の曲はブラックなノリで作られているので日本人キャストでも人種の違いをストレス無く物語の中で受け取る事が出来ていると思います、またもちろんそれは体現出来ている松下さんの力の賜物です。

MicroさんはLin Manuel Mirandaが作ったウスナビの一生懸命で少し不器用そうな部分をより明確にした印象で日本人ならではのウスナビを演じていました、また予想外にキレキレで表現力のあるダンスにビックリしました。

気になったのは衣装で、日本人キャストがワシントンハイツの人々を演じヒップホップ色のあるミュージカルと言う事でそれを意識したアイテムと強い色を多く使った衣装でワシントンハイツの雰囲気を醸し出そうという意図はわかるのですが、この作品は特別な人々では無くワシントンハイツに住む普通の人々の物語だと思うので少し現実離れした様に見えて物語とのギャップを感じました。

震災以降の日本と一度は打ちのめされながらも歌い踊り立ち上がり"HOME"を胸に暮らすワシントンハイツの人々が重なり今の日本でやる意味があったし、さらに確かに日本のミュージカルに新たな1ぺージを刻み可能性を広げた公演だったと思います。
オリジナルキャストの中から新しいスターが出てきた様にこの日本人キャストからも新しいミュージカルスターが出る様な熱さと勢いを感じるカンパニーでした。


『Beautiful』 レポ [観劇レポ]

Stephen Sondheim Theatreで上演中のミュージカル『Beautiful』を観て来ました。

この作品は数々のヒットソングを世に送り出しアメリカのポップス史に名を残す伝説のシンガーソングライターCarole Kingの半生を描いたジュークボックスミュージカルです。

あらすじはブルックリン生まれでソングライターになりたいCarole Kingは16歳の時にデモテープを売り込みデビューするがなかなか上手く行かず後の夫となるGerry Goffinとタッグを組んで様々な歌手に曲を書き下ろすソングライターとして親友でライバルでもあるBarry MannとCynthia Weilコンビと切磋琢磨史ながら数々のヒットソングを世に送り出す様になるが・・・と言うストーリーです

舞台は青や紫の落ち着いた色使いの薄暗い舞台にピアノ1台が置かれた状態から始まりCarole Kingが"So Far Away"を歌って〜Caroleの自宅〜スタジオへと二階建てで電飾とスライドする大きな板での場面展開が印象的なセットでのステージングが全編通して言える事ですがとてもスムーズでオープニングから舞台の色んな顔が観れて面白かったです(特にスタジオへの場面展開はダイナミックで見物です)。

Douglas McGrathの脚本はわかりやすく小気味良く展開しCarole Kingはの人生に自然にミュージカルシーンを溶け込ませていました、物語の中でCaroleや周りの人々のささやかな相手を想う気持ちや愛情、それゆえの悲しみが曲に反映されて作られ歌われる様子を丁寧に描いているので目の前で観るとリアルな質感ゆえにより暖かく・悲しく感じられて心に響いてくるのでリアルタイムじゃない自分の様な世代でもキャロルの人生と楽曲の合わさった時の心の動きを世代を超えて共有出来る作りだったと思います。

主演は『On a Clear Day You Can See Forever』でトニー賞ミュージカル助演女優賞にノミネートされたJessie Muellerで彼女はCarol Kingを演じる為に彼女の本やインタビューを読んだり、映像を観たり、ピアノレッスンを受けたりして徹底的にリサーチを重ねた役作りが活きた素晴らしいパフォーマンスでした。
冒頭で"So Far Away"を歌った後にキャロルが16歳の時にシーンが移った時のJessie Muellerの初々しい少女感、さらに物語が進むにつれてライバルとの競争、離婚などを経てリアルに年輪を重ねた大人の女性の雰囲気に変わって行く演技は本当にナチュラルでした、また痛みを乗り越えGerryが作詞した恋人との出会いの喜びを歌ってる"Natural Woman"をレコーディングしてる姿には感動せずにはいられないしラストに"Beautiful"を力強く歌い客席にキラキラした笑顔で微笑む彼女は本当に美しかったです、この舞台を観た人は絶対に彼女を好きになるぐらい魅力的でキュートなCarole Kingを演じていました、今年のトニー賞ミュージカル主演女優賞は彼女が相応しいと思います。

他にもGerry Goffinを演じたJake EpsteinのCaroleや娘と一緒に居る時の優しい姿・仕事で才能を発揮している時のキラキラした姿と何か満たされず浮気や薬物に手を出し追い込まれて壊れていく姿のギャップのあるダメで最低な所もあるんだけど憎みきれないGerryを好演していました(あまりのGerryのダメっぷりにCaroleが抑えていた怒りをぶちまけるシーンでは良く言ったと拍手が起こっていました)

Barry Mannを演じたJarrod SpectorとCynthia Weilを演じたAnika Larsenもチャーミングで人間味のある演技が実在感があって良かったです、あとなんと言っても二人とも声に特徴があって歌が上手い!!

久しぶりにストーリーと音楽の相乗効果で観客の心に訴えてくるジュークボックスミュージカルが誕生したって感じでこれは『Bullets Over Broadway』と作品賞を争うロングランは折り紙付きの作品だと思います、いやー素晴らしかった!!



『Bullets Over Broadway』 プレビュー レポ [観劇レポ]

St. James Theatreでプレビュー公演中のWoody Allen脚本、Susan Stroman演出・振り付けの『Bullets Over Broadway』を観て来ました、Musical Comedy Is Back With Bang のキャッチコピーを裏切らないこれぞブロードウェイミュージカルって感じの舞台でした。

あらすじは1920年代のニューヨーク、若い脚本家のDavidの所にプロデューサーのMarxが出資者を見つけたと連絡があり会いにいくとなんとその出資者はギャングの親分のNickだった、しかも出資の条件はスターになりたい愛人の演技ド素人のOliveを使うこと!!
相手がギャングの親分で怖いし、Oliveは演技ド素人で大根な上に声はキンキンするしワガママでおバカ、しかし自分の作品を上演したいDavidは条件を引き受けブロードウェイでの上演に向けて動き出しギャング・恋人と主演女優との三角関係・脚本の思いがけぬ展開でのリライト・殺人事件など様々な事に巻き込まれていく・・・と言う話です

Cole PorterやBessie Smithなどのその時代を彩った様々な楽曲を使ったある種ジュークボックスミュージカルとも言える作品でさらにSusan Stromanのブロードウェイの伝統的を受け継いだオールドファッションな振り付けが舞台の時代にも作風にもかっちりハマっていてGolden Ageのミュージカルの世界にタイムスリップした感覚でした。

古き良き時代の舞台の抽象画の様な幕をマシンガンで撃ってタイトルを浮かび上がらせてからのクラブダンサーのSusan Stromanらしい楽しい振り付けのダンスという流れであまり言葉に頼らず一気に作品のテイストを観客が受け取る様な軽快な展開のオープニングが心地よかったです。

その後も1920年代前後のジャズやブルースやミュージカルナンバーにのせて展開していくのですが、古い楽曲でも今回のミュージカル用にアレンジにしてオーケストラが生で演奏し、さらにWoody Allenの脚本によってギャグやそこと繋がるのかって言う意味が付け加えられているので古くささを感じさせない様な再生のされ方をしていたと思います。

そんな中でも1幕ではOliveのアパートで歌われる”I Want a Hot Dog for My Roll”のド下ネタのホットドッグのネタの時のホットドッグマン登場は爆笑でしたし、”Let's Misbehave”を歌いながらのWarnerとOliveの軽快な掛け合いと小道具のある仕掛けのあるイスを使ったコミカルなシーンやトライアウト公演を行うボストンへ向かう列車のセットにキャストが次々乗り込みながらダンサーが列車の上でタップダンスを踊る”Runnig Wild"のシーン、二幕でのニューヨークへの列車のそれぞれの客室の中をメリーゴーランドの様に回転するセットで見せながら同時進行で物語が展開していく”Good Old New York"のシーン、劇中劇を上演するセットをぐるぐる回転させながらギャング達がCheechを追いかけるチェイスシーンなど全編に渡って視覚的にも楽しい仕掛け満載でした。

Daidを演じている主演のZach Braffは歌はそこまでではないですが舞台に出てきただけで華があって、がっつりコメディーなんだけど自然で確かな演技が素晴らしくて上々のブロードウェイデビューでした。

しかし自分が一番気に入ったのはOliveの警護でついて来るギャングのCheechを演じたNick Corderoです、無骨な振る舞いなんだけど天性の脚本の才能を持っているCheechを絶妙なバランスで演じる、さらにタッパがあってダイナミックなタップを踊り、ドスの効いた声でアニキ感満載で歌う姿は最高でした(特にギャングの仲間達と豪快なタップを踏みながら歌う”Tain't Nobody's Biz-ness If I Do"はめちゃくちゃカッコ良かった)、個人的にトニー賞助演男優賞は彼のモノになると思います。

その他にも顔だけでもそのキャラクターのバックボーンが滲み出てる説得力ある良い顔の俳優陣を適材適所に配置したキャスティングでした、特にNickのVincent Pastoreは堅気には絶対見えません(笑)

ウディ・アレンが好きだったブロードウェイミュージカルを復活させた様なギャグあり華やかなダンスありワクワクする歌ありの楽しいミュージカルです、終演後「これは大ヒットになるぞ」や「プロデューサーズを観た時みたいだ」って声も聞こえたので生き残るAudience's Showになる可能性大だと思います。

トニー賞を何部門取ることになるやら。


『The Bridges of Madison County』 レポ [観劇レポ]

Schoenfeld Theatreで上演中のミュージカル『The Bridges of Madison County』を観て来ました

この作品はClint EastwoodとMeryl Streep主演で映画化もされた1992年にベストセラーとなったJames Wallerの同名小説が原作のミュージカルで、写真家のロバートと夫と子供がありながらもロバートと恋に落ちてしまったフランチェスカの4日間の出来事とその4日間を胸に秘めたその後をも描いた作品です。

まず、劇場に入って目に入るのは椅子が点々と置かれ、公衆電話が付いた電柱と青々と茂った木が一本づつ、さらに舞台を二つに分けるように斜めに轢かれたフローリングが印象的なシンプルなセットです。
この舞台上でキャスト自ら小道具やセットを自然な流れで移動させシーンをシームレスにスムーズに展開するステージングが見事でした。

また、この作品はDonald Holderによるライティングが微細で情感たっぷりで、過去と現在の時間軸・時間の経過・心の距離などを巧みに演出していました、特にフランチェスカにロバートが橋で写真を通して語りかける"The World Inside a Frame"のシーンでは夕暮れの日の傾きを巧みに表現していて曲と合間ってとても美しいシーンになっていました。

Bartlett Sherの登場人物の立ち位置や斜めに轢かれた様々な境界線の意味を持つラインの使い方、シーン毎に登場人物の心の動きを演出する電話の使い方や朗読劇の様に出番ではない俳優が舞台上に置かれた椅子に座って舞台を見つめる事で観客にも違う視点からの物語を感じさせる等の細かく思わず唸る演出も素晴らしかったです。

Jason Robert Brownの楽曲はピアノとアコースティックギターの音色が印象的な美しい曲ばかりで、さらに舞台になった土地の空気を感じさせる楽曲作りは流石の一言です、しかし自分は気に入りましたが新しく大胆な構成の『Jasonさん攻めたなー』って言う曲が多いので万人にウケるかは?です。

キャストではSteven Pasqualeは色気のある佇まい、情感たっぷりで確かな歌声・演技でとても魅力的なロバートを演じていました、特にフランチェスカに「一緒について来てくれ」と歌う”Before and After you/One Second & a Million Miles”や”It All FAdes Away” は必聴で朗々としたスケールの大きい歌声を聴かせてくれて鳥肌ものでした。
Kelly O'Halaは豊かなソプラノで見事にJason Robert Brownの楽曲を歌い切ってくれましたが彼女のソプラノはクラシックにより過ぎていて少し無機質な印象でストーリーを語る上でプラスになったかは疑問です。
さらに1番問題だと感じたのは彼女の仕草や佇まいから色気があまり感じられなかった事です、これがあるかないかではこの作品は大きく説得力が変わってくるので他にもっと適役な人が居ただろうと思ってしまいました。

またこの作品はほぼほぼごく限られた場所でのフランチェスカとロバートの儚い愛を描いた作品なので、場所も登場人物もあまり動きがなく、あの劇場の規模にしては場所の動きも登場人物の動きも心の動きも小さくまとまり過ぎだと思います、さらに言うと4日間の2人の心の湧き上がりとその最高の4日間がその後の人生までもある種呪いの様に心の中に留まり続けると言う事がこの作品の肝でその部分はミュージカル的に盛り上がるのですが、それに向けた物語の他の部分がやや大人し過ぎる感があり原作がミュージカル向きではない印象です。

確かに綺麗にまとまっていて全体的なクオリティは高いのですが舞台からも客席からも熱をあまり感じられなかったのが心配です、トニー賞まで公演が続くかな?って気もします。
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『Kinky Boots』レポ [観劇レポ]

Al Hirschfeld Theatre で上演中のトニー賞ミュージカル作品賞受賞作品『Kinky Boots』を観て来ました。

2005年にイギリスで公開された同名映画が原作であらすじはイギリスの田舎町ノーザンプトンにある倒産寸前の靴工場Price&Sonが、 ドラッグクイーン御用達のキンキーブーツ (いわゆる女王様ブーツ)を作ることで再起を狙うというW.J. Brookes Ltdと言う実際の会社の実話に基づいた作品です。

ブロードウェイミュージカルらしい作品でウケるのもわかるし楽しくてロングランしてるのも納得の作品だけど個人的にはちょっとノレませんでした。

これは観る人によって好き嫌いは別れると思いますが良く言えばわかりやすいキャラクターの立った登場人物ばかり、けど個人的には登場人物がちょっとステレオタイプにキャラクタナイズされ過ぎていて感情移入できませんでした、特にこの作品の脚本が『La Cage aux Folles』でゲイのカップルを豊かな表現で描いたHarvey Fiersteinなのでどうしちゃったんだろうって感じです。

演出は新しさが感じられず本当にこれは去年オープンした作品か?と思ってしまいました、良く言えばわかりやすいフリとオチがちゃんと用意されてる演出、しかし個人的にはローラのテーマが流れたらローラが出てきたり、歌詞で写真撮影の事を歌ってたらフラッシュがたかれたり、ボクシングシーンが全編スローモーションだったり等と直感的過ぎて描き方に考えさせたり想像させる余白が全くなくて思考を停止させる演出で少しやり過ぎだと感じました。

キャストではこの作品でトニー賞最優秀ミュージカル主演男優賞を受賞したドラァグクイーンのLola役のBilly Porterの歌はゴスペルのバックグラウンドがあってR&B歌手としてデビューしたキャラクターのある歌声で流石のひと言ですが演技はシーンごとにコメディの顔・悲しい時の顔等パターン化されてる様に見えてロングランを経て少しマンネリ化してる部分もあるのかな?と思います、まだ彼を観たいというのもわかりますがそろそろ新しい血をショーに迎えても良いタイミングなのかもしれません。

オリジナルキャストのStark SandsからCharlie Price役を引き継いだAndy Kelsoは様々な顔や細かなセリフ回しで良い演技をしていましたが歌はハイトーンにちょっと苦労してる所もありました、しかし”Soul of a Man”ではCharlieの感情をパワフルにダイレクトに歌い切ってくれるのでグッとくる事しきりです。

Lauren役のJeanna de Waalはとてもチャーミングなコメディエンヌで"The History of Wrong Guys"のシーンは振り切った演技と工場にあるベルトコンベアやエアー機を上手く使った演出で楽しいし可愛らしいシーンになっていました。

シンディー・ローパーが作詞作曲を担当した楽曲はキャッチーなポップロックで耳に残るノリやすい曲ばかりでこの作品にピッタリだと思いました、数々のノリの良い楽曲の中にもLolaとCharlieがお互いの父親の願った息子の姿と自分とのギャップや想いを歌う"I'm Not My Father's Son" やLolaが老人ホームにいる父親の前で歌う"Hold Me in Your Heart"など切ない名曲もあり聴き応えもバッチリです。

色々マイナスな事も書きましたがラストのファッションショーから"Raise You Up/Just Be" の流れは今までのいまいちノレなかった事をぶっ飛ばしてくれるほど楽しくミュージカルを観てる喜びを感じさせてくれるパワーのあるフィナーレに相応しいシーンでした、Jerry Mitchellの演出に合う人はめちゃくちゃ楽しいミュージカル体験が出来る作品だと思うので実際に観て確かめてもらうのが良いと思います。



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