『Hamilton』観劇レポート [観劇レポ]

ついに!!ついに!!挑戦13回目にして今最もチケットが取れない超話題作『Hamilton』のLotteryが当たったので観に行ってきました。
名前を呼ぶボックスオフィスの係の人がRyoheiが読めなくて最初違う人が呼ばれてるのかと思いましたが気がつけて良かったです、さらに当たった人は何枚チケットが欲しいか言うのですが「One!!」と言った時に周りから物凄い拍手が送られてちょっと嬉しかったです。
当てるのに一ヶ月掛かりましたが名前を呼ばれた時の体中の血が沸き立つ様な興奮で全ては吹っ飛びました、しかもチケットは作品の主人公であるAlexander Hamiltonが描かれている10ドルで最前列のほぼど真ん中という超素晴らしい席!!
さて本題の作品についてですが『Hamilton』はタイトルの通りアメリカ建国の父(The Founding Fathers)の一人であるAlexander Hamiltonの一生を描いたミュージカルです。

Alexander Hamiltonはカリブ海のネイビス島に私生児として生まれましたがアメリカに移り住みKing's College(今のコロンビア大学)に進学し、そこで出会った仲間と義勇軍を作りアメリカ独立戦争に参加し22歳ながらGeorge Washingtonの右腕として活躍し独立を勝ち取った後にばらばらの国だったⅠ3州の憲法や法律を分析してどうやったら連邦国家としてまとまる制度が作れるかを書いた論文集で準憲法の様に見なされている「The Federalist」を主席筆者として執筆し、さらに憲法草案を起草します。
またThomas Jeffersonが嫌っていた商業や金融業が国の未来を作ると財務省や中央銀行や造幣局を設立して農業国家から産業国家へとなる礎を築きあげニューヨークからワシントンD.C.へ首都を移す事をJeffersonと密約するなどアメリカに多大なる影響を及ぼし貢献をした人物でありながら49歳という若さで友人から政敵になってしまったAaron Burr(Jeffersonと大統領選で
決選投票をした時にHamiltonがJeffersonが選出される様に動いた)との決闘で命を落としたという劇的な人生を送った人物です。

キャラクターやシーン毎にギャングスターラップっぽいゴリゴリの韻の硬いラップをして力強さを出したり、一小節の中に畳み掛ける様にリリックを重ねて心から言葉が溢れ出る内からの欲求を表現したり、初めて大学で後に一緒に戦い国を作って行く仲間達に会う時にボイスパーカッションと机を叩くリズムでサイファーが出来てフリースタイルっぽいやり合いをしてフローやリリックの巧みさでHamiltonがリーダーになる器である事を示してお互いを認め合ったり、Jeffersonとのラップバトルでラップ巧者の2人で議論をエキサイティングなものにしたり、Schuyler三姉妹がDestiny's Child風なR&Bを歌ったり、 King GeorgeがThe Beatles風なポップロックを歌ったり(彼が出てくるだけで笑が起きる強烈なキャラクターでした)とラップや楽曲のスタイルでのストーリーテリングが実に巧みでしたし耳に残る曲の多い事多い事、やっぱりLin-Manel Mirandaは天才です。

Andy Blankenbuehlerによる振付のダンスはヒップホップを軸に様々なスタイルを取り入れた新しいシアターダンスの形を作り出していて一つ一つの振りがメリハリが効いていて力強くユニークでストーリーの中にちゃんと生きて雄弁にこちらに語りかけてくる素晴らしい振付で特に群舞になった時の舞台上から溢れ出てくるエネルギーと迫力に圧倒されました。

Thomas Kailによる演出も盆を左回りにしてる時にストーリーを進め右回りにした時に時間を戻して違うキャラクターとの間で考えていた事や起こっていた事を見せる、まるで舞台上をターンテーブルの上のレコードの様にスクラッチする様に使ったり、前述した様にシーン毎に酒場でサイファーでのフリースタイルをしたり議会でラップバトルで議論するなどヒップホップと歴史劇を見事に融合させて観た事のない様な新しいミュージカルを見せてくれました。

ビジュアル面もDavid Korinsによるセットデザインもブロック造りの納屋みたいなセットに細かいピッチフォークや椅子、シャベル、銃、本、ロープなどの小道具や仕掛けが散りばめられていて隙がないですし、Paul Tazewellの衣装もキャラクターの個性や心情の変化を色の変化やデザインのスタイルで表現していて見事でしたし、Howell Binkleyによる照明もスタイリッシュかつ大胆でどのシーンも画になるものばかりでバンッと決まった時は思わず心の中で「かっこいい」と鳥肌が立つキレの良さでした。

キャスティングも歴史上の実在の人物達が登場人物であるにも関わらずアメリカの建国期の移民であるHamiltonの物語を今のアメリカの人々が語るのだからと人種に捉われないキャスティングをしている事が歴史物なんだけど現代の香りがして過去と現在を繋いで今自分達がこのストーリーを語るんだと言う気概と熱意がキャスト全員から感じられ、それに加え脚本・衣装・楽曲・演出など様々な方向でキャラクター造形がしっかりされているので舞台に登場するどの人物も魅力的でキャストのそれぞれのキャラクターへの愛着とそれを感じさせる熱の入ったパフォーマンスを引き出していると思いました。
中でも素晴らしかったのはHamiltonの激動の人生を見事に演じ切った脚本・作詞作曲も手掛けたLin-Manuel Miranda、奥さんのElizaを裏切られながらも許し愛の強さを渾身の演技で表現したPhillipa Soo(ラストシーンでの涙を浮かべながらも彼女の力強く立っている姿は息を飲む素晴らしい演技でした)、狂言回しの役回りを担いながら出会いから決闘で射殺した後までのHamiltonへの感情の変化をパワフルなパフォーマンスと繊細な演技で魅せたAaron Burr役のLeslie Odom Jr.、さらにMarquis de LafayetteとThomas Jeffersonを演じ強烈な個性を魅せたラッパーであり俳優の今作でブロードウェイデビューを飾ったDaveed Diggsです、彼らはトニー賞にもノミネートされて有力候補になると思います。


伝統的なブロードウェイミュージカルの形を曲、振付、演出、キャスティングなど様々面から覆し新たな発明をしているこの舞台は精神性からしてヒップホップで歴史物をここまでエンターテインメント性があって奥深い全く新しいミュージカルにした今作は傑作としか言いようがありません。

あらゆる面で革新的に新たな挑戦をし壁を乗り越えてきた作品なのですでに多くの賞を受賞してますがこれからもトニー賞を始め多くの賞をかっさらうと思うのでチケットは高騰しLotteryも中々当たりませんがニューヨークに来た際には是が非でも観る価値のある作品なので劇場に足を運んでみてください。

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