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映画『チョコレート・ドーナツ(Any Day Now)』 レポ [映画レポ]

明日で地元の映画館での公開が終わってしまうから急いで『チョコレート・ドーナツ(Any Day Now)』観に行ったけど、見逃さないで本当に良かったです。

今自分の持ってる言葉で幾ら書いてもこの作品の素晴らしさは伝えきれないだろうしミスリードはしたくないから具体的な事は書きません。
母親が障害を持ってる子供達の保育園の様な施設で働いていて自分は小さい頃から彼ら、特にこの映画のマルコの様なダウン症の子達と一緒に運動会やクリスマス会などで一緒に遊んだりして同じ時間を過ごす事が多かったのでこの映画が他人事ではなく現実と地続きになった感覚でマルコと今まで一緒に時間を過ごして来た子達が重なってとても深く感動しました。

この映画で描かれている様に様々な差別や困難な状況が現実に彼らにはあります、しかし同時にそんな彼らを守り育んでくれる愛のある周りの人がいる事もこの映画や自分の実体験からも確かで、障害のある子達が周りの人達を笑顔に豊かな気持ちにしてくれる事も確かなのです、もし時間があって映画を観ようと思ったらこの作品を観てこの映画の中や自分が見て来た愛のある人達の一員になって障害のある子達だけじゃなくてあらゆる差別や困難な状況にある人達を考える一助にして欲しいと思います。

観終わった後に出て来る原題の『Any Day Now』が心に響く事間違い無しです。

〜あらすじ〜(公式ホームページより抜粋)
1979年、カリフォルニア。シンガーを夢見ながらもショーダンサーで日銭を稼ぐルディ。正義を信じながらも、ゲイであることを隠して生きる弁護士のポール。母の愛情を受けずに育ったダウン症の少年・マルコ。世界の片隅で3人は出会った。そして、ルディとポールは愛し合い、マルコとともに幸せな家庭を築き始める。ポールがルディのために購入した録音機でデモテープを作り、ナイトクラブへ送るルディ。学校の手続きをし、初めて友達とともに学ぶマルコ。夢は叶うかに見えた。しかし、幸福な時間は長くは続かなかった。ゲイであるがゆえに法と好奇の目にさらされ、ルディとポールはマルコと引き離されてしまう……。血はつながらなくても、法が許さなくても、奇跡的に出会い深い愛情で結ばれる3人。見返りを求めず、ただ愛する人を守るために奮闘する彼らの姿に我々は本物の愛を目撃する。

映画『スーサイド・ショップ』 レポ [映画レポ]

パトリス・ルコント監督の初アニメーション作品『スーサイド・ショップ』をヒューマントラストシネマ有楽町で3Dで観て来ました、3Dで観ると仕掛けたっぷりの映像が楽しく、独特な絵も合間って飛び出す絵本の様な質感でした。

これは好き嫌いが結構別れる作品じゃないかな?と思いました(自分はどっちかと言うと好きです)。

原作はジャン・トゥーレの小説「ようこそ、自殺用品専門店へ」でどんよりとした雰囲気が漂い、人々が生きる意欲を持てずにいる大都市。その片隅で、首つりロープ、腹切りセット、毒リンゴといった、自殺するのに便利なアイテムを販売する自殺用品専門店を開いているトゥヴァシュ一家。そんな商売をしているせいか、父ミシマ、母ルクレス、長女マリリン、長男ヴァンサンと、家族の誰もが一度たりともほほ笑んだことがなかった。人生を楽しもうとしない彼らだったが、無邪気な赤ちゃんが生まれたことで家庭内の雰囲気が少しずつ変わり始め……っというかなりブラックなストーリーです。
そう言った独特な世界観のファンタジーだけど現実をデフォルメした世界なので最初に登場する鳩がどんどん自殺していく人や暗い世界を観るうちに自分も落ち込んでいく描写やミシマや奥さんが自分達の商売に悩み苦悩するシーンのシュールレアリズムの絵の様な描写が説得力を持っていました。
またそう言う暗い世界でも登場人物が自殺した実在の人物の名前が元になっていたりお父さんのミシマは三島由紀夫、娘のマリリンはマリリン・モンロー等細かい所までブラックユーモアが行き届いていて面白かったですし、ブサカワの絵にミュージカルシーンが沢山あるので暗い陰鬱な雰囲気を和ませてくれて観やすくしてくれていたと思います。

予告編を観てミュージカルにしたら良さそうだなと思っていたら前述の様にミュージカルシーン満載でその上フランスで劇評で『「演技に哀感 歌に喜び」「生きる喜び」をうたいあげるミュージカルだ。生きづらさを抱えた人々の描写には、ルコントらしい哀愁がある。対照的に、ミュージカルシーンは突き抜けた明るさだ』とあったようにアランが友達とバスや街中で歌うシーンや生きる事の大切さ人生の中で幸せを探す大切さを歌うラストシーンはミュージカルとして辛く苦しい時にこそ歌うと言う純粋なミュージカルシーンとしてとても魅力的でした。

ここまで書いて来て絵は独特で飛び出す絵本の様な質感で楽しく、ブラックユーモアを交えて命の大切­さを描く作風も素晴らしかったんですが一つこれはどうなの?と思った所は暗い陰鬱とした世界でも生きる事の大切さ人生の中で幸せを探す大切さを歌うラストシーンが始まる直前に訪ねて来たお客になぜ青酸カリ入りのクレープを売ったのか?という所です、売った理由を悲しい時を思い出させてくれたからって言ってたけど、なら最後の曲を売る前に聴かせて生きる事の大切さを訴えるべきじゃないのか?と思ってしまいました。
あと上映時間が72分ぐらいだけど、もうちょっと友達達とおじさんの明るい理由とかお兄ちゃんの考えが変わる所とかを描いても良かったのかな?と思いました、けど作品のメッセージをシンプルに伝えるには充分だったとも思います。

かなり変わった作品なので一度観に行ってその世界観を体感してみるのも面白いと思うので、劇場で出来れば3Dで観てみて欲しいと思います。

映画『イリュージョニスト(L'Illusionniste)』レポ [映画レポ]

『ベルヴィル・ランデブー』のシルヴァン・ショメ監督作の『イリュージョニスト(L'Illusionniste)』を観ました、素朴で綺麗な絵とセリフがほとんどなく淡々と静かに物語が展開されて行く余白が多くてそれぞれの様々な想いを投影できる十人十色の映画だと思いました。

この映画は『ぼくの伯父さん』の喜劇王ジャック・タチが娘のために遺した脚本を基に、1950年代のヨーロッパを舞台に、時代遅れの古くさい手品をしている老手品師のタチシェフと他の世界とあまり交流のないやっと電気が来た様な離島にすんでいてタチシェフを何でも出来る魔法使いだと信じている言葉の通じない貧しい少女アリスの出会いと別れ、親子の様な愛情の物語です。

この映画では変化と犠牲が描かれている様に思います。描かれている映画の舞台は1950年代のヨーロッパでロックの時代で、そんな時代にタチシェフは古臭い手品をしていてどんどん観客がいなくなっていっても少ない観客を楽しませようとしていますが仕事はどんどんロックミュージシャンに取られ少なくなって行く、また離島から自分を魔法使いだと思い込んで着いて来たアリスに自身の娘の幻想を抱き彼女を楽しませ、がっかりさせない様に彼女が街で欲しがったものを魔法の様にプレゼントし続けます、しかし時代遅れのタチシェフのお金はどんどん無くなって行きとうとうバイトや不本意な仕事をしなければいけなくなってしまいます、同様にタチシェフの仲間の曲芸師や腹話術師やピエロも時代の変化に巻き込まれ自殺をしようとしたり、腹話術の人形を売って暮らそうとするも物乞いになったり、別の仕事を始めたりその時代の変化に向き合い皆何かを犠牲にしています。そういった犠牲をセリフをほとんど使わず描いているのでアリスとの別れからラストのシーンまでの流れは本当に切なく美しかったです。

タチシェフはアリスに自身の娘の幻想をアリスはタチシェフに魔法使いの幻想を抱き合ってる繊細な物語をキャラクターの動きや様々な物の色、音楽など画面の中の変化でちゃんと伝わってくる様に細かく丁寧に描写をしているのがわかる職人が作った素晴らしい映画でした。

映画『クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち』 レポ [映画レポ]

去年公開されて観に行きたかったけど行けなかったドキュメンタリーの巨匠、フレデリック・ワイズマン監督作品『クレイジーホース・パリ 夜の宝石たち』をやっと観る事が出来ました、美しいイメージに溢れたショーと人の映画でした。

まず、「クレイジーホース」って言うのは「ムーランルージュ」「リド」と並び、“パリの3大ナイトショー”に数えられる老舗ナイトクラブでこの映画はその「クレイジーホース」の舞台裏を撮影したもので、「クレイジーホース」の新作の演目の制作現場を中心に、そこで働く女性ダンサー達、スタッフ、オーディションの風景等を垣間見ることが出来ます。

「クレイジーホース」のショーは女性の美しさのイメージを膨らませて音楽や魔法の様な照明、女性のシルエットの美しさを際立たせる衣装、官能的で独創的な振り付けで本当に美しい魅惑的なショーが繰り広げられていました、まさにスタッフが映画内で言っていた様に『究極の美を通しての誘惑のゲームの可視化』『女性美の結晶』『美と夢の宝石箱』という言葉に偽り無しです、しかしその様なショーを作り上げるには様々な試行錯誤や芸術とビジネス、ナイトクラブの運営のシステムなど幾つもの壁を乗り越えて作られて行く様子が描かれていてとても創作の難しさ苦しみが感じられるのですが、それと同時にそのクリエイティブで刺激的な魅力ににやられて一緒に作ってみたいとも思ってしまいました。
そんな一緒に作ってみたいと言う気持ちを現実のものにした人が映画には登場して、それは舞台美術担当の人なんですがその人が演出家のフィリップとの理想の女性像の違い等で苦悩する中でも夢の舞台で働けている事に凄い幸せと充実感を感じている姿がとても羨ましくカッコ良く見えました。

彼らの様にこの映画に登場する人達はみんな魅力的で個性豊かで様々な考えを持っているんだけれどみんながみんな一つの『究極に美しいショー』を作ると言う信念を持っていて、だからこそ生まれる衝突や美しさが作られる瞬間あってまたショーとは違うドラマが観れました。

この映画を観た後はきっと「クレイジーホース」の究極の女性美のイメージの世界に飛び込んでみたいと思うはずです。

映画『きっと、うまくいく(3 Idiots)』 レポ [映画レポ]

インド映画史上最大のヒットを巻き起こしたラージクマール・ヒラーニ監督の『きっと、うまくいく(3 Idiots)』を観て来ました、本当に最高で今年観た映画の中でNo.1です!! 
インド映画ならではの途中に休憩がある位長い170分の上演時間ですがギャグ満載・ミュージカルシーンあり・テンポの良い展開であっという間に170分過ぎてしまいました、話の内容的に大学3年の今の時期に観れて良かったです、同じ世代の人にはぜひ観て欲しいです。

この作品はインド屈指のエリート理系大学ICEを舞台に、型破りな自由人のランチョー、機械よりも動物が大好きなファラン、なんでも神頼みの苦学生ラジューの3人が引き起こす騒動を描きながら、行方不明になったランチョーを探すミステリー仕立ての10年後の物語が同時進行で描かれるコメディ映画です。

ガリ勉ですかしっ屁の名人の嫌なやつの事を『サイレンサー』って呼んだり、ドリフに出てくる様なよぼよぼのおじいちゃんが出て来たり、スピーチの原稿を勝手に書き換えてめちゃくちゃな内容にしたりベタベタなギャグ満載だけどインドのカースト制度や過度な競争に加え教授や親からによるプレッシャーで学生の自殺者が急増している事や点数と就職の事しか考えない教育等の社会的な問題も同時に描きだしていて、何の為に生きる事が幸せなのかを映画の中で何度も繰り返されるセリフ『All Is Well』と共に伝えてくれます。

音楽での演出が古典的でお決まりな感じなんだけど、流れる音楽の魅力や流れるタイミングが抜群で登場人物の感情と観客の感情がグッとリンクする様で映画館の中が笑いと感動で溢れている様でした。インド映画の特徴のミュージカルシーンもめちゃくちゃテンション高いし工夫が一杯でとっても楽しかったし、登場人物に辛い事や嬉しい事があったのもわかっているので辛い悲しい時・心が弾む時に歌うと言う風にミュージカルシーンが純粋に存在しているなと感じました、まただからこそあんなに魅力のある心が動くシーンになっているのだと思います。

ギャグあり・魅力的な音楽あり・ラブシーンあり・強烈なヒール役あり・ランチョー、ファラン、ラジューの3 Idiots始め個性的なキャラクターありでポップでカラフルでドラマチックな作品なので個人的にはこれこそミュージカル化するべき作品だと思うし、ブロードウェイでやったら絶対ヒットすると思います。
舞台でキャストがみんなで『All Is Well〜』って歌い踊ってるの観たら最高だろうなー。

絶対また観に行こう(^^)めちゃくちゃオススメです。


映画『モンスターズユニバーシティ』 レポ [映画レポ]

ピクサー最新作でダン・スキャンロン監督の長編アニメーション初監督作品の『モンスターズユニバーシティ』を観て来ました。

ピクサーなのである程度のクオリティは折り紙付きだろうと思って観に行ったら、その期待を裏切らずにやっぱり面白かったです。

学生時代のサリーとマイクがいかにして出会い、怖がらせ屋のコンビを結成することになったのかを描く今作ですが、怖がらせ屋のエリートの家の出で才能に溢れるが努力をして来なかったサリーと一生懸命勉強と努力をしてきたけど怖がらせ屋には見た目が可愛らし過ぎるマイクのコンビがなれるモノとなりたいモノの現実を受け入れて成長していってお互いの無いモノを補い合って行く姿がグッと来る映画でした、こう書くと今までにもあった感じの話だけどこのモンスターズユニバーシティは最初から最後までサリーとマイクを甘やかさないで『怖がらせ屋』と言う夢が二人に重く伸し掛る結構リアルな現実を描いていると思います。
あと序盤のサリーの嫌な奴感にリアルにイライラするけど徐々にマイクと友達になって弱さを認める事が出来た時に名コンビになるバディムービーの醍醐味が味わえるラストの展開は最高でした。

モンスターズインクから12年経って技術が上がったのかモンスターの質感が半端じゃなく進化してました、モンスターそれぞれのテカテカ、ふわふわ、カサカサ、ネバネバした感じがとってもリアルで観ただけでさわったらこんな感触なんだろうなっていうのが容易に想像できるぐらいでした。
そんなクオリティの個性的なモンスター達を観れるだけでも観に行く価値ありかなと思います。

光の演出も素晴らしくて、マイクが一歩踏み出す時の影と光の使い方で希望に踏み出す姿やまた逆に希望を失う姿を上手く描いていましたし、学長が初めての講義で学生に向かって話をする時の絶妙に不気味な光の当たり方等のシーンもさすがって感じです。

モンスターズインクを観てないとわからないセリフやキャラクターのネタが多いので、この作品単体でも十分に楽しめるとは思いますが、やはりモンスターズインクは観ておいた方が『だから、あいつはこんな感じになったのか』とか『あのキャラクターはだからヒマラヤに行く事になったのか』色々前作と繋がって来てスッキリ楽しく観れると思いますし、この作品で結局マイクの夢は最後まで報われないけど、モンスターズインクを観てたら違う形で報われているのがわかってジーンと来ます。

エンドクレジットが始まっても帰らないで最後まで観ると良い味の小ネタが観れるので帰らない方が良いですよ(あのキャラクターは個人的に今回の作品で一番好きです)

映画『パシフィック・リム』 レポ [映画レポ]

ギレルモ・デル・トロ監督作品『パシフィック・リム』観て来ました・・・・最高〜にテンションの上がるお祭り映画でした!!

ギレルモ・デル・トロが大人を片手にロボット、もう一方の手に怪獣を持って遊んでいた男の子に戻してくれて、しかも男の子の空想を映画的な表現で何倍にも膨らましてる作品です。

アバンタイトルでの怪獣(映画の中でもKaiju)の登場シーンでの半端じゃないでデカさ、またそれに対抗する為に作られたロボットのイエーガーのデカさ・強さ、これぞって言うバトルスーツ!!それらが登場する度にテンション上がりっ放しです。
また、こう言ったスケール感の大きいキャラクターに広い奥行きのある空間が多く登場するので映画館の大音量で3Dで観る方がその世界観を堪能できると思います。

怪獣が別の世界からやってくる設定とかロボットの姿やロボットとシンクロして動かす等映画の中に昔の特撮、ロボット、怪獣、映画・アニメ・テレビシリーズのオマージュが散りばめられていてお『おっあれは!!』みたいな楽しい発見が沢山ありました、またそういった作品のお約束の展開(例えば一回やられたと思ってた怪獣がまた動き出す)もあったりしてさすがギレルモ・デル・トロて感じです、ただしそう言った日本的な怪獣映画の系譜を受け継いだ正統派って言う怪獣映画ではなくてあくまでもハリウッド映画らしい作品だと感じました。
あと、戦い方も機体ごとに個性があって単純な肉弾戦からその場にあった物を武器にしてプロレス的な戦いをしたり、ロケットパンチやチェーンソード、プラズマキャノン等の兵器が強い怪獣が出て来てピンチになると続々出て来るのもただ単純に楽しめました。

怪獣に対抗する為に作られたロボットのイエーガーはパイロット一人では負担が大きく二人一組(一体だけ三つ子)で記憶を共有し一体になって動かすと言うものなのですが、そこでパイロットが兄弟、親子、男女、上官と部下などの組み合わせで組む事によって衝突があったり、悲しみを一緒に乗り越えたり、力を合わせて戦ったりとバディムービー的高揚感もあって良かったと思います。

今まで書いて来た様に男の子の空想を何倍にも膨らました様な設定や展開なのでツッコミどころは沢山あるんですけど、この映画はそんな事するのは野暮でただアドレナリンを出しまくって楽しむのが最高の観方だと思います、今回自分が映画館で観た時に近くで観てた男の子3人組がイエーガーがピンチになると『ああ!!』って声が漏れたりロケットパンチやチェーンソードやプラズマキャノンでやっつける時には『いけー!!』とか『頑張れ!!』って言っていて日頃なら映画館で声を出されるのは迷惑だけど、この作品はこうじゃなくっちゃって思って自分も心の中で一緒に応援してました。

結構あっけなくやられちゃったり、あいつの活躍もっと観たかったって言うのがあったので続編制作希望です、次は2Dで観ようかな?また観たいな。

映画『風立ちぬ』 レポ [映画レポ]

宮崎駿監督作品『風立ちぬ』観て来ました。
個人的にはとっても心に染みるとっても良い映画でした、自分の好きなジブリが戻ってきたって感じです。


本当に素晴らしい映画でぜひ観てもらいたいので、なんとか映画のネタバレにならないように書きたいです。

関東大震災・大恐慌・病気、様々な事が起こって生きるのが辛い厳しい1920年代、さらに戦争に突入していってしまうと言う時代の中で主人公の堀越次郎の夢と奥さんの菜穂子が辿る結末を通して、堀辰雄がポール・ヴァレリーの詩の一節を訳した“風立ちぬ、いざ生きめやも”がじわっと、けど強く心に残る作品でした。観た後は『生きねば』と思うはずです。

主人公の次郎の声をエヴァンゲリオンの庵野秀明監督が起用されて話題になって賛否両論があるようですけど、自分は庵野さんが次郎で良かったと思います。次郎みたいなインテリでどこかオタク気質な人は少しぎこちなくちょっと堅いけど誠実さが滲み出てるあんな風な話し方が合ってると思います、またあの声で話してるからこそ菜穂子の為に話す言葉・する行動にグッと来るシーンが幾度とありました。

何と言っても絵の素晴らしさに圧倒されます、関東大震災の時の起こった瞬間やうねる線路・家、火事で燃えている街の風景や逃げる大勢の人の蠢く様子の恐ろしい迫力、次郎の夢の中で最初に飛ぶシーンやカプロー二と大きな飛行機に乗るシーンのさわやかで美しい風景等挙げたら切りがないほど全編絵に力がありました(個人的には次郎が最初の飛行機の残骸の前に立っている姿に泣いてしまいました)。
さらに色の使い方での演出もさすがのジブリ色です、映画での色が表す「予感」「心の動き」「登場人物の人柄」がぐんぐん入って来ました。
特に凄かったのが菜穂子が結婚する時に廊下を歩くシーンの色と光の変化でこのシーンは本当に感動的でした。

あと効果音が人間の声(オノマトペ)で表現されていたのが素晴らしかったです、もちろん普通の効果音も使われていてその使い分けによってその場面が次郎や他の登場人物にとってどのような場面なのかが感じられました。
例えば飛行機の音は人間の声で表現されていて、この物語で重要な夢と現実がリンクする効果があったと思います。他の自動車や汽車の音は普通の効果音なのに飛行機だけは人間の声で表現されていて、次郎にとって美しい飛行機を作ると言う夢が現実の中にあって、しかも飛んでいるという現実と夢が同居した時間だからこそ現実にはない人間の声で作られた飛行機の音がそう言った雰囲気を作り上げていました。
あと久石譲の東京藝術劇場のホールで録音された奥行きのある響きの音楽は素晴らしく美しく映画を演出してくれていて感動を膨らましてくれるくれました、これは映画館で聴いてみて欲しいです。

ストーリーテリングやドイツでの会話などに批判的な感想も見受けられましたが個人的にはちゃんと腑に落ちる様に表現されていたと思います、ただ映画を能動的に観れないと難しい所もあるのかなとも思います。

これ以上書くとネタバレになってしまいそうだし映画館に観に行って確かめて来て欲しいので終わりにします、オススメです。

映画『リンカーン』 レポ [映画レポ]

スティーブン・スピルバーグ作品『リンカーン』観て来ました。
とても見応えのある映画で、主演のダニエル・デイ=ルイスのダニエル・デイ=ルイスからリンカーンそのものになってしまった様な演技に大感動です(トミー・リー・ジョーンズもさすがでした)。

リンカーンと言えば1863年のゲティスバーグでの演説「人民の人民による人民のための政治」だったり「奴隷解放宣言」が有名ですけど、この映画の中ではそれらはほとんど描かれずアメリカの「合衆国憲法修正第13条」を下院議会で通すっていう事だけを150分描いた映画になっています。
「合衆国憲法修正第13条」は奴隷制度を憲法で禁止する為のものでそれを通すには議会の3分の2の賛成票が必要になるんですけど、リンカーンの共和党だけでは票が足りないのでどうにかして奴隷制度にも賛成だし、南軍との戦争には反対の民主党からあと20数票を手に入れる為に裏で工作したり交渉したりするのを描いているんですけど、その駆け引きだったり、戦争の終結と奴隷解放の天秤に苦悩するリンカーンや周りの人々のドラマが本当に面白かったです。

リンカーンが奴隷の人達の本当の自由の為にどれだけ心を削って体を削って修正案を通そうとしていたのかと言う姿がかっこ良かったです。
日頃はあまり声を荒げずに落ち着いて昔の逸話をもちだして説得をしたり、ジョークを言って会話を円滑に進めようと政治をしている冷静なリンカーンの裏には息子の死や南北戦争で失われた命に心を痛めている様子等があって、それでも自由・平和の為に未来を見据えて動いている姿に心動かされました。
そんなリンカーンのセリフで目の前のことしか見ずに文句や不満を言う議員に向かって「今ここで開放すれば、まだ生まれていない奴隷の子孫達、それこそ何千何万という子孫が、永遠に続く何百年と続く子孫達も開放されるんだ!」「だから、絶体に、これをやらなければならない!」「そのためだったらどんなことでもする!」って声を荒げて言うシーンが本当に素晴らしかったです。
またトミー・リー・ジョーンズ演じるサディアス・スティーブンスの奴隷解放に対する想いの強さの理由がわかるシーンや政治家としての行動が試されるシーンも心が熱くなる名シーンだと思います。

スピルバーグの容赦ない戦争・暴力描写がこの映画だとより平和の素晴らしさを強調する演出になっていて、さすがスピルバーグでした。
あとジョン・ウィリアムズの音楽が今回もとても印象的で耳に残ってサントラが欲しくなってしまいました。

情報量が多い映画なのでこの映画を見る前に当時のアメリカの価値観や南北戦争の構図やアメリカにとってのキリスト教がどういう物だったのかを予習しておくとより深く楽しめると思います、オススメです。

映画『愛、アムール』 レポ [映画レポ]

ミヒャエル・ハネケ監督の『愛、アムール』を観て来ました。
観ながらまだまだ自分には消化しきれないなと思いながらも、ふと自分が小学生の頃に亡くなったおじいちゃんと病院とヘルパーさんの力を借りながらもおじいちゃんを在宅介護をしていたおばあちゃんの姿が蘇ってきました。
『愛、アムール』の様に入院するのは嫌だと言っていたおじいちゃんの意思を尊重して最後まで在宅介護をしていたおばあちゃんの姿を思い出すと、映画でのあの老夫婦の姿は何にも言葉を交わさなくても感謝や辛さや愛情等の色々な感情が通じあってる様に観えた数々のシーンが静かに強烈に染み入って来ました。
特に生きる為に必要な食事やトイレのシーンが時間と共に徐々に様子が変わっていくのがあの老夫婦を観ていると自分の祖父母と重なって悲しくも美しく感じられました。
また、ラスト手前のあの行為とその後の一緒に出掛けるシーンの繋がりは本当に良かったなと思います。

ハネケ監督のちょっといじわるなぐらいにリアルな間や伸ばし過ぎじゃない?ってくらいの余韻のある撮り方が凄かったです(ミヒャエル・ハネケらしいって言えばらしいのかな)しかもリアルな老老介護の様子を住んでるアパートから一度も出ないで見せるだけであんなに感動的な映画に出来るなんてハネケ監督のファニーゲームとか白いリボンとか隠された記憶とかを観て毛嫌いしてる人も観てみて欲しいです。
この映画はハネケ監督の育ての親の彼のおばさんとの経験を元に作った映画らしいので本当に真摯に愛を描いた名作だと思います。
エマニュエル・リヴァさん(ヒロシマ・モナムール)とジャン=ルイ・トランティニャンさん(男と女)の名演技も必見です。

自分が年をとった時に観たらまた印象が変わるのかな?

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